強みを伸ばし、生き抜く力を育む科学の知恵

ポジティブ教育とは?

 

当ブログを運営する、NPO法人フラーリシング・エデュケーション・ジャパン(FEJ)は「ポジティブ教育」という、子どもの「こころの強さ」や「幸福度」を高めるとして、主に欧米で注目され広まっている、科学に基づく新しい教育方法を日本に伝え広める活動を行なっている団体です。

 

当ブログでは、そんな「ポジティブ教育」について、研究論文や主要な著書を紹介しながらお伝えしていきます。

 

第一回目の今日は、「ポジティブ教育」とは何かについてのご説明と、当NPO法人FEJ(エフ・イー・ジェーと読みます)の活動内容についてざっくりとお話します。

 

「ポジティブ教育」とは??

 

簡単に言うと、幸福や成功をテーマにした「ポジティブ心理学」という科学の知見に基づいて提唱されている人の強みやこころの強さを引き出し幸福力を高める教育方法のことです。

 

近年、「個性」とか「モチベーション」とか「自己肯定感」といったキーワードが教育の世界でもずいぶんと注視されるようになり、家庭教育でも、「褒めて伸ばす」というフレーズはほとんどのお母さんが一度は耳にしたことがあるほど定着してきました。(ちなみに「褒めるだけ」の子育てがベストではないことや、効果的な褒め方・叱り方があるということも、多くの人がご存じだと思います。)

 

こうした動きは、子どもを育む上で、親や教師が子どもを型にはめて一方的に「こうあるべき」という限定的な理想像を押し付ける教育には限界がある(時代の流れとともに支障が出てきている)ことが分かってきて、一人一人が持つ「内なる力」を引き出すこと、本質的な「こころの強さ」を育むことの重要性が認められてきた証拠です。

 

一世代前の、「こうあるべき」という限定的な理想像を押し付ける教育で順調に育った人たちは、いい学校を出て、いい会社に就職して、出世し、裕福になり、それが幸福の価値であるとされる文化の中では「成功者」となりました。

 

しかし、すでに多くの人が気づいている通り、そうした「成功」が必ずしも「幸福」の必要十分条件ではないのです。

 

そうした誤った「幸福の方程式」によって疲弊していることに薄々気がつきながらも、そこから抜け出せないでいる人も多いのが現状ではないでしょうか。

 

また、グローバル化や人工知能など技術の進歩などにより、社会で求められる能力も変わってきました。

加えて、個々人が仕事に求める価値も多様化し、従来型のトップダウンのやり方をするリーダーも、また上からの指示を待つだけのメンバーも、いずれも求められる人材ではなくなってしまったことも、教育のトレンドの変化の大きな要因になっています。

 

そうした背景のもと、本当に充実した「良き人生」を歩むためにはどうしたらいいか、また、今、そしてこれから必要とされる人材を育てるにはどうしたらいいかといった問題に対してパワフルな解決策を教えてくれるものとして、「ポジティブ心理学」という分野への注目が、十数年前から欧米で、そして数年前からは日本でも、爆発的に高まってきているのです。

 

「ポジティブ心理学」が始まってすでに20年が経とうとしている現在、ポジティブ心理学の知見を教育に応用する分野も大きく発展してきています。これこそが「ポジティブ教育」なのです。

教育界では、特にこれから重要視されていく「非認知スキル」の形成に大いに役立つことが期待されています。

 

そもそもポジティブ心理学とは?

 

日本ポジティブ心理学協会のサイトでは…

私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい方向に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域である

と定義されています。

つまり、ポジティブ心理学というのは、一学問分野というよりは、人間のポジティブな側面に焦点をあて、そのメカニズムを科学的に解明し、いかにして人のポジティブな側面を引き出す(高める)かを模索する研究を分野横断的に捉える枠組みを指しており、心理学以外の学問分野や古くからの研究も引用されています。最近では、脳科学分野での研究も注目されています。

そのため、上では「簡単に言うと…」などと書きましたが、実際にはポジティブ教育もやはり、一口に「ポジティブ教育=○○」と言えるものではありません。

 

ポジティブ教育では何が育まれるの?

では、ポジティブ教育がどんなものかをご理解いただくため、ここでは私たちFEJで扱う主要なテーマを少し挙げてみましょう。

 

1. ポジティブ教育研究の主要テーマとなっているもの

  • 強み(性格的な強み、才能など)
  • レジリエンス(逆境に打ち勝つ力、感情調整や衝動抑制、論理的思考、楽観思考など)

 

2. 今教育界で特に重視されているもの

  • 自己肯定感
  • 自尊心
  • コミュニケーション能力
  • 主体性

 

3. いつの時代も子育てや教育現場で課題となるもの

  • 意志力(自制心や集中力)

 

4. これから注目度が一気に上がることが予想されるもの

  • グリット(やり抜く力)
  • マインドセット(やればできる!という気持ち)
  • 自己効力感(自己肯定感や自尊心につながる本質的な意味の自信)
  • マインドフルネス(ストレスの軽減や精神を研ぎ澄ます効果を持つ瞑想)

 

5. ポジティブ心理学の定番のもの

  • 幸せ(ウェルビーイング)
  • 成功(目標達成)

 

こう、ざっと挙げただけでも、その基となる研究や理論は非常に広範囲にわたることが分かると思います。

実際、心理学だけでなく経済学や脳科学の知見も大いに盛り込まれているのです。

このように、「ポジティブ教育」を考える時、その要素はさまざまな学問領域に散在していて、すべてをまとめた書籍などは出ていないのが現状です。

 

そうした背景の中でも、特に強みレジリエンスなど、研究が盛んな分野は、すでに日本国内にも少しずつ広まりつつあります。 企業の人材育成や教育分野での認知度は、ここ数年で飛躍的に高まり、重要性を強く主張する専門家も増えてきています。

 

しかし、ポジティブ教育を網羅的に扱い、家庭や教育現場など実際の現場に活かす知識や技術を伝えるというアプローチは、これまではまだ日本では行われていませんでした。

 

 

NPO法人FEJは何をしている団体なの?

FEJは、日本で初めて、ポジティブ教育を体系的に学べる場を提供し、その実践を支援、推進する団体です。

具体的な活動内容を紹介します。

 

1.  FEJの主な使命

  • 科学的根拠に基づく知識やテクニックの伝達(各種講座、セミナーやブログでの情報発信)
  • ポジティブ教育ができる人材の育成
  • 全国の教育関係者のネットワーク作り
  • 教育関係者同士が事例や体験談などを共有できるプラットフォームの役割
  • 日本の教育現場へのポジティブ教育の導入推進
  • 家庭教育の支援

 

2. 今後開講予定の講座等

  • 「ポジティブ教育プラクティショナー(仮)」を認定する資格講座(通年講座)
  • 子どものレジリエンス教育の資格認定講座(日本ポジティブ心理学協会との共同開催)
  • ポジティブ教育をテーマとした各種セミナー、ワークショップ
  • 教育関係者向けの交流会
  • 親向けの子育てセミナー、ワークショップ

 

3. その他の使命

  • 国内外の専門家を招いた講演会やシンポジウムの開催
  • 主要なポジティブ教育関連の書籍の翻訳
  • 大学研究室と連携しての効果検証や統計データの収集
  • 研究者と実践家との橋渡し

 

 

ポジティブ教育は誰のためのもの?

ポジティブ教育は、子どもの健やかな成長、幸せや成功を願い、そのためにどのようなサポートが有効なのか、科学に基づく方法を知りたいすべての大人にとって役立つものです。

例えば…

  • 子育て中の親や祖父母
  • 幼児教育に力を注ぐ保育士や幼稚園教諭
  • 小学校、中学校、高校の先生や養護教諭、スクールカウンセラー
  • 教育委員会のメンバー
  • 大学の教員や就職支援に関わる職員
  • 習い事や塾の先生、スポーツチームの監督
  • 行政の子育て支援に携わる職員や、保育士、助産師、保健師
  • その他子育てや子どもの教育に関わるボランティア

など、子どもと接するすべての人にぜひ知っていて頂きたい知識です。

 

上述したように、各種講座やセミナー等、志を同じくする仲間と一緒に学び情報交換や交流をする場を設けていく予定ですが、当ブログでは、主要な研究者の理論や書籍を紹介しながら大切な知識を掲載していきますので、イベントに参加できない方々も、是非このブログにお越しいただき、それぞれの現場でご活用いただければ幸いです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

次回は、FEJで扱うポジティブ教育の全体像を説明します。お楽しみに!

 

FEJ理事 藤原

 

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